【令和6年9月2日号】コラム

現在働き方や暮らしの価値観が多様化してきています。
そんな中、実際に福祉の現場で働きながら
「福祉業界でどうやってキャリアを積んでいけばいいんだろう?」
「キャリアアップして収入を増やすにはどうすればいいの?」
このように悩んでいる方も多いのではないでしょうか?

本記事では

・一般的なキャリアについての考え方や定義
・福祉業界の現状
・具体的なキャリアアップの方法

などを紹介しています。

すでに福祉業界で働いていてキャリアアップを目指している方や、キャリアアップについて興味のある方は是非参考にしてみてください。

福祉・医療業界でのキャリアを見直す時期 転職活動を始める秋

1 キャリアってそもそもどういう意味?

1-1 キャリアとは何か?

キャリアとは個人の経歴を指す言葉です。

履歴書に書けるような職歴や役職をイメージされる方も多いかもしれませんが、実は仕事やビジネスにおける経歴だけでなく、人の生涯やプライベートの意味も含まれます。

ついでにキャリアと合わせてよく聞く言葉についても見ておきましょう。

・キャリアアップとは…

能力や地位などを今よりも向上させること

・キャリアデザインとは…

将来自分がどうなりたいか、どのような働き方をしたいか明確にし、そのために何が必要かを考え実現に向けて計画を立てること

キャリアを積むというのはその仕事の経験を積むだけではありません。

仕事に取り組む過程でスキル・知識・経験を身につけ人間性を磨いていくこと、そしてプライベートも含めた自分自身の生き方を磨いていくことだと捉えられます。

1-2 福祉業界におけるキャリアアップとは

福祉業界におけるキャリアアップというと

・新たな資格取得を目指す
・より専門的な資格を取得する
・管理職などの役職を目指す

などが挙げられます。

特に介護業界で活躍したい場合は、まず介護福祉士を目指し、そこからより上位の資格や役職または独立開業を目指すといった流れが一般的です。

国家資格である介護福祉士を取得すれば、現場で働く職員の指導や管理も任される重要なポジションにつける可能性があります。

最終的に自分がどのように働いていたいかをイメージしながら、キャリアアップの方向性を考えていきましょう。

1-3 なぜキャリアデザインが必要なのか

なぜ今こうしたキャリアデザインを考える必要があるのでしょうか?

それは社会情勢や仕事への意識・価値観が多様化したからです。
現在、終身雇用制度や年功序列制度などを導入している会社は少なくなりました。
それに伴って人材の流動性も高まっています。
転職も珍しくなくなりましたよね。
学歴や職歴よりもスキルや能力が重視される雇用へと変化してきているのです。

キャリアデザインをするには

①自分の現状を把握する
②将来やってみたい仕事・なりたいポジションをイメージする
③現状と将来のギャップを把握し、理想を実現するために必要な行動をとる

この3ステップで考えてみましょう。

キャリアデザインを設計し、実現に必要なスキルや能力をどれだけ身に付けられるかが今後の働き方や人生そのものに影響する時代になっています。
働く人それぞれが自分に合ったキャリアデザインを設計することが重要です。

2 福祉業界の現状ってどんな感じ?魅力についても解説

ここからは福祉業界の現状や課題、福祉業界で働くことの魅力について紹介していきたいと思います。

2-1 人手不足と待遇改善が課題

1,人手不足
福祉業界でまず課題として挙げられるのは人手不足です。

人手不足の主な原因は日本全体の少子高齢化と言われています。
2025年は「団塊の世代」と呼ばれる1947〜1949年生まれの人が75歳以上になる年です。
約800万人いるこの世代が後期高齢者になることで働き手が減ると共に介護の需要が増え、約245万人の介護人材が必要になると言われています。

また、こうした人手不足は「数」の問題だけではありません。
現場で働く職員の高齢化も問題となっています。
特に介護業務は身体的に負担の大きなものも多く、職員が高齢になるにつれ対応が難しくなるからです。

今後も高齢者が増え出生率が下がる傾向は続くと考えられており、助けを必要とする高齢者が増える一方で、若い働き手が減る悪循環になるでしょう。

2,待遇改善
次に課題として挙げられるのは待遇の改善です。

福祉業界は以前から、業務内容に給与が見合っていないという労働条件のマイナスイメージにより、働く場所として敬遠されてきました。
今後ますます人手不足に陥れば、職員1人あたりの負担が増えるのは明白です。

待遇を改善するために、以下のような対策が求められます。

①柔軟な雇用体制
正社員雇用にこだわらず、時短勤務やパート・アルバイトでの雇用を検討するなど、柔軟に人材を取り入れることが大切です。
正社員に固執すれば採用のハードルが上がり、人材不足の課題解決に繋がりません。
非正規雇用でも働ける環境や外国人労働者を受け入れる体制も必要です。

②IT・ICTの導入
ITやICTを導入することで業務の一部を自動化できるため、職員の業務負担が軽減されます。
例えば見守りシステムを導入すれば、職員の休憩時間や記録作成時間の確保ができるようになるなど、現場が抱える課題の解決が可能です。

③処遇改善加算
魅力的な給与や福利厚生を打ち出すことも働き手を集めるのに効果的と言えます。
処遇改善加算はキャリアアップの支援や労働環境の改善に努める事業所に対して支給される補助金です。
制限があるため収益を上げづらい介護事業所でも給与水準をアップでき、人が集まりやすく離職されにくい職場の維持が期待できます。

2-2 福祉業界で働く魅力

福祉の仕事は確かに大変ですが、その分やりがいや魅力もたくさんあります。

第一に人々の生活を支え社会に貢献する仕事が多くあります。
利用者の笑顔や成長を見られるため、仕事のモチベーションにも繋がるでしょう。
そして介護・福祉・医療など、様々な分野の専門的な知識やスキルを身につけることもでき、キャリアアップを目指せます。

また、福祉業界は人手不足や待遇改善などの課題を抱えていますが、高齢者数の増加や障がい者福祉のニーズ増加に伴って、今後も需要が高まっていくと考えられます。
新たな技術やサービスの導入も進んでおり、労働環境も改善の兆しが見られていることから将来性のある業界と言えるでしょう。

3 キャリアアップの方法とは?具体的なキャリアアッププランをご紹介

将来どのような働き方を目指すにしても、まずは現場で経験を積むことが大切です。
資格を必要としない仕事もある介護業界には、資格を所持していない方や未経験で始める方も多くいます。
ここからは介護の現場で働く方がどのようにステップアップしていったらいいのか、若手・新人介護職員の場合とベテラン介護職員の場合に分けて見ていきたいと思いますので、自分に合ったキャリアアップの形をイメージしてみてください。

3-2 若手・新人介護職員の場合 キャリアアップするための具体的な方法

具体的なステップとしては

①介護職員初任者研修の取得
②介護福祉士実務者研修の取得
③介護福祉士の資格を取得

上記の流れで進みます。

①介護職員初任者研修の取得
介護の基礎知識とスキルの習得を目指す入門的な資格です。
厚生労働省が認定しているこの研修では以下の内容を学べます。

・介護に関する基礎知識や基本的な考え方
・利用者の心身の特徴と支援方法
・生活支援技術(食事、入浴、排せつ介助など)

受験資格に現場での実務経験が求められないため、未経験でも取得でき座学と実技を組み合わせたカリキュラムで介護の基礎を学ぶことが可能です。
総研修時間は130時間で修了試験に合格すれば資格を取得でき、以下のようなメリットがあります。

・身体介護が認められるようになる(食事、入浴、排せつ介助など)
・居宅サービスや訪問サービスで働ける
・無資格者よりも給与が高くなる可能性がある

キャリアアップを目指すなら取得がおすすめです。

②介護福祉士実務者研修の取得
介護職員初任者研修よりもさらに幅広い分野の知識と実践的な技術を学べます。
総研修時間は450時間で介護職員初任者研修を取得していなくても受講できますが、修了済みなら一部科目が免除されるため320時間ほどに短縮可能です。

この資格を取得することで

・特定の医療行為(喀痰吸引、経管栄養)ができるようになる(※別途実地研修が必要)
・資格手当がついて給与アップする場合がある
・介護福祉士資格取得へのステップになる
・サービス提供責任者になるためのステップになる

といったメリットがあります。

③介護福祉士の資格を取得
この資格をもっていると専門的な知識がある証明になるため、リーダーや新人教育を担当するなど仕事の幅が広がります。
受験するには介護福祉士実務者研修を修了し、3年以上の実務経験が必要です。

認定介護福祉士やケアマネージャー、管理職、サービス提供責任者といった新たな役割で活躍するためにも取得をおすすめします。
試験の合格率は60%ほどなので、しっかり対策を立てて勉強しておきましょう。

3-3 ベテラン介護職員の場合 キャリアアップするための具体的な方法

介護福祉士の資格を取得すると様々な未来の選択が可能です。
代表的な道筋としてはケアマネージャーが挙げられますが、管理職や施設長、生活相談員を目指すといった道もあります。
ここからは介護福祉士としてさらにキャリアアップするにはどのような選択肢があるのか、いくつか紹介していきます。

①ケアマネージャー(介護支援専門員)
利用者の状態に合わせたケアプランの作成や介護給付費の管理を担当する仕事です。
ケアマネージャーになるためには介護支援専門員実務研修受講試験に合格する必要があり、介護福祉士の資格をもっていることと、一定期間の実務経験が求められます。
基本的には日中の勤務が多く、夜勤をせずに働けるというのもメリットです。
資格手当の支給が見込めるため、給与アップの可能性もあります。
合格率は10〜20%と狭き門ですが、今後も長く介護の仕事を続けていきたいとお考えであればチャレンジしてみる価値はあるのではないでしょうか?
ただしケアマネージャーになるには試験に合格するだけでなく、5年ごとに更新研修を受けなくてはなりません。

②管理職・施設長
現場で経験を積み、マネージメント力を高めれば管理職や施設長などを目指せます。
その名の通り施設の管理や運営を任される仕事です。
施設や事務所の運営に関わる手続き全般や、収支の管理なども業務に含まれます。
また、利用者の情報を管理したり職員の人事を担当したりするため、仕事は多岐に渡り責任が伴う重要な役職です。
介護施設によって要件は異なりますが、難易度の高い資格をもっていなくてもなれます。
そのため、ケアマネージャーではなくこちらの道を選択する方も一定数いるようです。
求人募集される場合もありますが、現場で経験を積むことで経営側から打診される場合もあります。

③生活相談員(ソーシャルワーカー)
介護施設で利用者や利用者のご家族の相談に応じたり、各種手続きをしたりするのが主な仕事です。
生活相談員になるには下記のいずれかの資格が必要とされています。

・社会福祉士
・精神保健福祉士
・社会福祉主事任用資格

資格がない場合でも実務経験があればなれることもありますが、専門的な知識が求められる場合が多く、経験を積んでいる職員に向いています。
生活相談員は利用者の精神的な支えとなる存在でもあり、コミュニケーション力や共感力も必要とされます

まとめ

・一般的なキャリアについての考え方や定義
・福祉業界の現状
・具体的なキャリアアップの方法
について紹介してきました。
「将来、自分はどのように働いていたいのか」
「どんなキャリアを積んでいくのか」
ご自分の現状把握とキャリアを見直し、キャリアアップを考えるきっかけ作りになれば幸いです。